労働基準法第24条には、以下のような賃金支払い5原則というものがあります。
使用者は、①通貨で ②全額を ③毎月1回以上 ④一定期日に ⑤直接労働者に 支払う。
使用者の方からしてみれば、当たり前のことだと思われるかもしれませんが、②の全額の
原則が意外と守られていないのです。
以前にもブログに書いたことがあったと思いますが、社有車を運転していた労働者が過失で
自損事故を起こして車両を破損させた場合、会社が労働者の同意なく一方的に修理代を賃金
から控除したような場合は、全額を支払っていないことになり24条違反とされる場合があります。
それでは、会社の金銭を着服して、多大な損害を与えた者から一方的に賃金控除したような
場合はどうでしょう。
労働法コンメンタールの裁判例には、「労働者に使用者に対する明白かつ重大な不法行為が
あって、労働者の経済保護の必要を最大限に考慮しても、なお使用者に生じた損害の填補の必
要を優越させるのでなければ権衡を失し、使用者にその不法行為債権による相殺を許さないで賃
金全額の支払いを命じることが社会通念上著しく不当であると認められるような特段の事情がある
場合には、この相殺が許容されなければならないものと考えられる。」としています。
つまり、特段の事情があれば、使用者が一方的に賃金控除することも認めるということになります。
参考までにご案内しました。
武藤社会保険労務士事務所